原発性皮膚リンパ腫は、全体の約85%をT/NK細胞が占め、そのうち半数以上が菌状息肉症(mycosis fungoides;MF)とSezary症候群である。近年では、臨床像および細胞の形態に加え、細胞表面形質によって機能的に分類し、さらにクロナリティー解析を行うことにより以前では診断に至らなかったリンパ腫も診断することが可能になっている。しかし多彩な臨床像を呈し長期的な経過をとる症例が多く、初回生検時には炎症性変化であっても10数年の経過を経てリンパ腫へと移行するものもあり、現在のところそれらを事前に予測する手段は確立されていない。今回われわれは、皮膚T細胞リンパ腫と臨床的に鑑別を要する炎症性皮膚疾患として、局面状類乾癬(parapsoriasis en plaques;PP)を中心に免疫組織化学的にリンパ腫への移行を予測しえるか比較検討した。1993~2011年に昭和大学病院で臨床・病理学的にPPと診断された18例、MFと診断された8例(28検体)、炎症性皮膚疾患として扁平苔癬(lichen planus;LP)14例を対象とし免疫組織化学的染色を施行、PPとMFについてはさらにクロナリティー解析を行い検討した。CD4/CD8間の解離はPP、MFではそれぞれ33%、88%に認めたが、LPでは全例で認められなかった。またCD7の減弱についても、PP、MFでその傾向が強かった。CCR3は、PP、MF、LPの全例で陰性だったが、CCR4、CXCR3はLPに比してPP、MFで陽性例が多かった。T細胞性クロナリティー解析では、PPは全例陰性であったが、MFは50%でモノクローナルな増殖を認めた。以上より、PPはLPに比してよりMFに近い表面形質の発現が認められ、炎症性皮膚疾患に加え腫瘍性変化の側面も持つことが示唆された。また経時的に生検されたMF症例の病勢については、クロナリティー解析は補助診断として有効なことが確認された。(著者抄録)